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GO! ララ、GO! (29)

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二十九 不器用で傲慢な部下

昇進するまでララは自分には部長の任務をこなす力量が十分にあると信じて疑わなかった。しかし実際にこのポストについてみると、想像以上に多くの仕事をこなさなければならないことがわかり、かなり大きなプレッシャーを感じた。レスターは放任主義で、口うるさくもないかわりに部下をサポートする気もなく、ララは様々な仕事を手探りで行わなければならなかった。ウェンホァとジェイソンが次々に辞職したことは採用業務に就いたばかりのララにとってまさに弱り目に祟り目である。

ララはホンにバカにされたくないという意地とハワードを失望させたくないという気持ちから歯を食いしばって頑張り、常に元気そうに振舞っていた。DBは典型的なアメリカ企業で、社内である程度のポストに就いている社員は男女を問わずhigh energy(エネルギッシュ)なiron man(鉄人)のイメージを保とうとする。誰もが食事も睡眠も必要ないかのように、前日の会議終了時間が遅ければ遅いほど翌日は早朝に出社して血色のよい顔色で元気よくSAY HELLO(あいさつ)しなければならない。ララは周りに合わせて元気を奮い起こすしかなかった。

最近のララはプレッシャーのせいで苛立ちやすくなり、ヘレンをきつく叱責することも何度かあった。だがそれもヘレンに対しては気安い態度をとっても大丈夫だとわかっていたからである。出会ってから四年間、ヘレンとは常によい関係であったし、さらに彼女はあっけらかんとした性格で嫌なこともすぐに忘れてしまう。しかし、二人の新しい部下にはこのやり方は通じないだろう。

生産性の低い一部の営業所を閉鎖するため、二人の部下はそれぞれ担当エリアの営業所と連絡を取り合い、関連事項について話し合うことになった。

だが、リャンの仕事は明らかに要領が悪く筋が通らないものであった。彼が提出する報告書には常に多くのミスがあり、しかもあまりにつまらないミスばかりである。一目でわかるほど出鱈目な内容をリャンは見分けることができないのだ。

たとえば彼の報告書では威海営業所の家賃が青島営業所より高いことになっているが、都市経済の規模を考えれば青島の物価が威海に比べて段違いに高いことは誰でも知っている。威海の家賃が青島より高いなどということは有り得ない。だが彼は大真面目で汗水たらして働き、毎日のように残業している。ララは彼を叱責するに忍びなかった。

その後、彼が作成した数部の報告書にも基本的なケアレスミスがいくつも発見された。たとえば、報告書では新疆営業所は蘭州営業所よりも販売額がずっと低く、月平均売上が百五十万(SOPで規定した閉鎖対象下限額)に達しておらず、雇用人数も少ないとされているが、これは明らかに間違いだ。新疆営業所はDB中国でも比較的大きなブランチで、全社員が一目を置くエリート集団である。業績は上々で社員数も比較的多い。人事担当者なら調べるまでもなく大体の状況はわかっていなければならない。ララはがっくりと肩を落とした。こんなデータ分析を上司に見せたら自分が恥をかいてしまう。      

二か月も経たないうちにララはリャンの特徴を理解した。彼は仕事には真面目に取り組んでいる。しかし困ったことに論理的思考が全くできない。特に臨機応変さとコーディネート能力が強く求められるプロジェクト管理に直面すると完全にロジックを失ってしまうのだ。これにはララもお手上げだった。

ララは理解に苦しんだ。面接試験ではリャンは非常に論理的に話していたし、それが彼を気に入った最も大きな理由である。ロジカル・シンキングこそが彼の最大の強みだと思ってしまった。話の筋は通っているのにどうして仕事があれほど出鱈目なのだろうか。

それだけならまだいい。問題はリャンの自尊心だ。ララはこれほど強い自尊心の持ち主に出会ったことがなかった。彼は長いこと人事と総務で働いてきたにもかかわらず、専門職としてのレベルは決して高いとは言えない。周囲が彼の無能さに気付くのを極端に恐れ、ミスをするたびに何とか言い逃れしようとする。それでも自分は有能なベテラン社員だと自負しているようだ。

ララは内心では悲鳴を上げていた――無能でも構わないのよ、お兄さん。無能なのに自分をひどく賢いと思っているところが怖いのよ。有能な者ほど癇癪持ちだとよく言うけれど無能なうえに独りよがりだなんて――。ララは業務経験が豊富なリャンがなぜ前の勤務先で出世できなかったのかがよくわかった。

だがララにはどうすることもできない。レスターが最初にリャンの気性には問題があると注意したのに、自分が忠告を聞かずに彼を採用してしまったのだ。リャンの上司である以上、なんとかcoach(指導)するしかない。ララは何度か彼の改善すべき点や仕事上のミスについて話し合おうとしたが、彼はsのたびに誰かにいきなり針を突き刺されたかのように激しく反応し、ララに具体例を挙げて説明させないと納得しなかった。

実例を挙げるのは容易だ。ララはDBで十分な訓練を受けてきたので何かの問題について話し合うときにはSTAR(situationtaskactionresult――状況、業務、行動、結果、つまり事案に関する全て)を必要とすることを心得ている。上司は部下その人を評価することを避け、事案そのものについて問題にすべきである。

ララが実例を出すたびに、最初は勢いこんで反論していたリャンは黙りこんでしまう。しかし彼はまた同じミスをする。何度か同じことを繰り返したのちに、彼はセルフチェックを放棄して間違いだらけの報告書をララに丸投げするようになった――彼は自分を買いかぶって北京出身者特有の傲慢さで私に対抗している――ララは彼の学習能力のなさにイライラし、ついに率直に指摘した。

「あなたが今月提出した四部の報告書にはどれも明らかに重大なミスがある。まず自分自身でチェックしたらどう? 仕事の正確さを確保することはあなたの責任なんだから」。

リャンは「申し訳ありません」と謝るくらいなら殺されたほうがましだと思う性格だ。場の雰囲気は一気に緊張した。ララはリャンを採用したことをひどく後悔した。彼の仕事への真面目な取り組みを評価していなければ、本当はすぐにでも解雇したかった。

パメラは逆に頭脳明晰さを十分に発揮していた。彼女は生産性の低い営業所を閉鎖するプロジェクトに迅速に反応し、論理的に思考し、全ての業務を順序だてて手配した。リャンのように汗をかきながら毎日残業する必要は全くなく、仕事では確実にララを満足させる結果を出した。ララが彼女にタスクと目的を説明しさえすれば、細かい段取りまで示さなくても彼女は自然と事を処理してくれる。時にはひと眠りしようとする上司を察してさっと枕を差し出す部下のように、ララがまだ何も言わないうちにその後に予測される業務と問題点を提起することさえあった。

リャンのほうはどんなに些細な手順も全て教えなければならず、うっかり細かい指示を忘れるとろくに仕事ができない。ララが問い詰めても彼は悪びれる様子もなく堂々としている。

ララは内心に矛盾を抱えていた。

彼女はパメラの人柄には警戒していたが、一方ではパメラの仕事に心から満足していた。だがリャンは人柄がよく狡猾なところは全くないが、いかんせん仕事ができない。とりわけ無能なのに自信過剰なところがララには我慢ならなかった。ララに口答えをし、部下への対応も悪く、ミスをちょっと指摘することもできないほど自尊心が強い。上司なのに毎日彼に気を使って口を聞かなければならないことにララは疲れてしまった。

しかし二人を同時にクビにすることもできないし、現状で新たに後任を探すのも面倒だ。ララは心を決めかねていたが、ともあれリャンを試用期間終了後に正式採用とした。ほどなくパメラも三か月の試用期間満了となる。

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