« GO! ララ、GO! (20) | トップページ | GO! ララ、GO! (22) »

GO! ララ、GO! (21)

https://www.kanunu8.com/files/dushi/200805/553/3715.html

二十一 部長になる覚悟 ――学習とストレス耐性

その日、レスターはワン・ホンのオフィスに来て言った。
「ハワードと話し合ってララを総務部長に昇進させることが決まった。ピーターもララは相応しい人材だと言っている」。

レスターは少し間をあけてこう続ける。
「何人かの本部長にも意見を聞いてみたが、めずらしいことに全員賛成だったよ。ちょっと意外だったね。少なくともウェイはララの昇進に反対すると思ったのだが。例の引っ越しの件でララはウェイと激しくやり合ったからね。彼がララはいい、と誰よりも快く賛成するなんて思わなかった。ララのコミュニケーション能力はやはり大したものだ」。

ワン・ホンはすぐには言葉を返せなかった。

「それもいいじゃないか。全員が昇進に賛成したのだから、新部長が仕事を始めてから何か問題が起きれば全員の連帯責任ということになる」。
 レスターは急に思いついたようにワン・ホンに言い訳した。自分がララの昇進に同意していると思われないよう予防線を張り、ララが部長には不適格だと判断された場合に、管理職全員に責任をかぶせてレスターの独断による誤った決定だったと指摘されないためだ。彼はさらに付け加えた。

「もちろん、私はララはしっかり務めてくれると信じているがね。そういうわけで、急いでララの異動昇進内申表を作成してくれ。Job description(職務記述書)も添付して」。

ワン・ホンは驚いて「彼女のlocation(勤務地)はどこですか?」と聞いた。

「広州だ。この点に関してはハワード本人がララを説得しようとしたが、彼女は妥協しなかった。彼女の好きにさせよう」。

ワン・ホンはさらに尋ねた。

「JD(職務記述書)は前にローズに使っていたものと同じでいいですね」。
 レスターの返事にワン・ホンは頭を殴られたような衝撃を受けた。

「以前の書類は使わないでくれ。ローズと違って、ララの肩書は『総務部長』ではなく『人事総務部長』になった。彼女の職責はDBが中国に設置したオフィス三十か所の総務管理に限らない。最も重要な違いは、彼女が本部以外の地域の人事にも責任を持つということで、主な職務は採用とER(Employee relationship、労務管理)だ。ララの部下の肩書も総務課長ではなく人事総務課長にする必要がある」。

 ワン・ホンはこのときばかりは「本当ですか!」と驚きの声をあげ、しばらくしてからやっと「指揮命令系統はどうなりますか?」と尋ねた。レスターはワン・ホンがこの話をフォローするだけで大変なことがわかっていたので、簡単な説明にとどめた。

「ララは私の直属の部下だ。この点はローズと変わらない。近いうちに上海と北京にそれぞれ課長を配属してララの部下とする。広州にはララが常駐しているので課長は置かない。また北京・上海・広州の主要三オフィスそれぞれ二名ずつ補佐を置き、残りの二十七営業所に各一名、営業部と兼任の補佐を配備する」。

 ワン・ホンは、冷静になって考えてみれば会社がララを「総務部長」にしようが「人事総務部長」にしようが自分には関係ない、自分は給与と福利厚生の仕事に専念すればいいのだ、と思った。しかし、採用とERを担当するリー・ウェンホア人事部長にとっては、自分の縄張りの半分とは言わずとも、少なくとも三分の一をララに持っていかれることになる。

 ワン・ホンは慎重にレスターに尋ねた。

「そのことをウェンホアは知っているんですか?」

 レスターは笑って言った。

「午前中に話をしたよ。リクルート業務はプレッシャーが大きいし、もともと人手が足りない部署だったから今年の人材募集拡大で疲労困憊していた。彼からは何度も人手を増やしてほしいと言われていたが、君も知ってのとおり増員は無理だ。予算がなくてね。今は有難いことにララの部署が本部以外の仕事を引き受けてくれた。ウェンホアは少なくともこの点は助っているんじゃないかな」。

 ワン・ホンは、ウェンホアは面白くないに決まっていると思った。目の前の仕事のストレスが多少は減るかもしれないが、営業所人事で最も重要な業務は人材採用であり、それを他の部門にまるごと持っていかれてしまうのは採用部長にとって屈辱的だ。

 ワン・ホンはここまで考えると、思わず野次馬的な興味から口を出した。

「ウェンホアはそのやり方にupset(動揺)するのでは?」

レスターはうなずいた。

「人間は本能的に変化を嫌うから多少は動揺するだろうね。彼には心配しないように伝えたよ。ララが営業所で担当するのは主にファーストラインの営業員募集で、最も高い肩書でもエリア部長どまりだ。管理職などの人事は全て本部のウェンホアが責任を持つ。事実上、千人の労働者を採用するより一人のSENIOR(上級職)を採用するほうが重要だ。この理屈は誰でもわかる。一言でいえば、ウェンホアは採用の仕事で最も責任の重い部分を受け持ち、ララに渡したのは最も価値の低い仕事、ということさ」。

 レスターはここまで話すと、自分が午前中の話し合いでどれほど容易くウェンホアを言いくるめたかを思い出し、いささか誇らしい気分であった。ワン・ホンは今まで「真面目だけが取り柄の働き蜂」として有名だったララが少しばかり狡猾になったと思った。彼女は総務部長になりたいだけではなく、ずっと人事業務を学びたいと希望していた。ハワードはリソースを要求する者に対しては必ず「君に分配するリソースで会社はどれほどのリターンを得られるのか」と質問する上司だ。ではララは会社にどんなリターンをもたらすというのだろう。

 ワン・ホンは気持ちを抑えきれずに聞いた。

「ララは今まで一度も人事をやったことがないんですよ。営業所の人事を彼女に任せるのはリスクが高くありませんか?」。

「もちろん一度に全て任せるわけにはいかない。今、ウェンホアに彼女に必要な研修計画を作らせているところだ。それからララの部下として北京オフィスに人事の経験が豊富な人材を採用する。また今後二か月間はウェンホアとジェイソンが営業所人事の仕事を兼務しつつララに仕事を引き継いでいく」。

 ワン・ホンはウェンホアをいささか気の毒に思い、それと同時にララのことを考えて手に汗を握り、「二か月間の引き継ぎでララは大丈夫だろうか」と再び心配せざるを得なかった。レスターは今後の事は全てウェンホアとララの責任で自分自身とは何も関係ないと言いたげな顔つきで肩をすくめて言った。

「これは厳しいチャレンジだが、それ以上に貴重なチャンスだ。この環境でララはかなり高い学習能力とストレス耐性を求められるだろう。私たちは彼女が奇跡を起こすことを期待しようじゃないか。部長になるならそれなりの覚悟が必要だ」。

ワン・ホンはレスターのオフィスを辞し、ララのJD(職務記述書)を作成しに戻った。心の中にはとうとう確かめることができなかった一つの疑念が渦巻いていた。

「ララに営業所の人事を担当させようと考えたのはいったい誰だ。ハワードか、それともレスター本人か?」。

|

« GO! ララ、GO! (20) | トップページ | GO! ララ、GO! (22) »

翻訳」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« GO! ララ、GO! (20) | トップページ | GO! ララ、GO! (22) »