« GO! ララ、GO! (16) | トップページ | GO! ララ、GO! (18) »

GO! ララ、GO! (17)

https://www.kanunu8.com/files/dushi/200805/553/3710.html

十七 採用難と転職難

 ララはローズの退職後に真相を知ることになった。ローズは実はとっくに退職の準備をしており、自分が辞める前に総務部長の後任候補を全て追い払ってレスターを窮地に陥れようとしていたのだ。彼はれっきとした人事本部長であるにもかかわらず自身の部下の目論見に気づかなかったために社内で大いに面目を失なった。

 今頃、上海オフィスのあちこちで口さがない連中あれこれ噂をしているに違いない。ララはローズが一体どれほどの恨みを抱えていたのかと考えずにはいられなかった。それと同時に、ララの心中には一筋の希望の光が見えてきた。ローズが退職すれば自分の番が来るのではないだろうか。

 ローズに振り回されたレスターはララを登用することを全く考えないでもなかった。しかし部長職を経験したことのないララをどうしても軽く見がちで、さらに総務部長のポストは社内規定で上海に設置すると規定されているが、彼女は広州から上海に異動することに消極的だ。彼はハワードに特別措置を求める自信がなかった。

 ローズが切迫流産を口実に休暇を取ってから、ヘッドハンティング会社はレスターに総務部長の候補者を何人か紹介している。レスターはじっくり考えた後に手元に届いた履歴書を何度か見比べて、採用部長のウェンホアに早急に面接候補者を絞り込むよう指示した。

上海オフィスに総務部長が不在となってから、各部門は大事小事を問わずレスターに直接お伺いを立てるようになった。北京オフィスでは、チャンの退職後もローズが適当な後任者を配属しないまま放置していたので、各部門からは北京にはなぜ総務課長がいないのかという不満の声が上がり続けていた。
 
 レスターは困り果てて、部長の後任探しを急ぐ一方で、北京の件はひとまずララに解決させようとした。
 
 ララはストレートに尋ねた。「ボス、私が総務部長になることは可能でしょうか?」。
 
 レスターはララの質問には逃げ口上を使うのが常であった。「ララ、慌てるな。社内での競争力を高めるためにもっとスキルを磨きなさい」。そしてララは「exactly(ごもっともです)」と答える。
 
 翌日、レスターはララのメールを受け取った。
――上海オフィスでリフォームプロジェクトを管理して半年間、過労でストレスがたまり、深刻な不眠症に罹り、血圧も常に高めです。医者からはしばらく休養するように言われましたが、総務部が人手不足である現状を考慮して、通院しながら広州オフィスの業務をこなしていくつもりです。
 
 ララのメールは続く。
――社内規定によれば、管理職は休日出勤の代休を取れず、課長職社員は休日手当が出ないかわりに代休を取ることができます。私はこの半年間、毎月一〇〇時間を超える残業をしており、労働法に規定された毎月の残業時間の上限である三十六時間をはるかに上回っています――。
彼女はレスターに七〇〇時間以上の残業をどう処理するかと問いただしているのだ(出勤日数に換算する八十八日、一か月の出勤日数を二十一日とすると四カ月強の労働時間に相当する)。
 
 ララはメールに六カ月分の残業届のスキャン画像を添付した。すべての残業届にはレスターのサインがある。レスターはこのメールを見て頭を抱えた。ララが上海で研修に参加している時、レスターはオフィスの通路で彼女の姿を遠くから目にするだけで動揺し、彼女を避けるようになった。
 
 レスターは採用部長のウェンホアに「総務部長の後任選びに何か進展はあったか」と催促した。
 
 ウェンホアは南京出身で、生まれつき眉目秀麗、長身ですらっととしている。彼は採用と労務管理を担当している。生来の性格に加えて、解雇・懲戒処分・降格など気の滅入る話を日常的にしなければならない労務管理で鍛えられた人となりは非常に融通がきき、人間関係の処理に長けていた。人と顔を合わせれば話し出すよりも先に笑顔を作る。人当たりは柔らかいが腹の中は油断できないと噂されていた。抜け目がなく人から恨まれることは少ない。些細な損得は気にせず、必要なときには進んで人助けもする。
 
 彼とレスターの間の最大の問題は二人の相性である。ウェンホアはちょうど仕事に脂がのり気力体力も十分な働き盛りで野心にあふれているが、ひたすら安穏を求めるレスターが最も重視しているのは給与と福利厚生とチームワークだ。そのため、採用部長であるウェンホアは十分な重用を得られないことを内心では不満に感じていた。

 男と女は別の種類の動物だ。ウェンホアはララのように自分の利益のために何度もレスターと争うことは考えられない。せいぜい何かのついでに遠回しに提案してみて、何も結果が出なければそのまま諦める。ララは女だからああいう行動が奏功する、あるいは少なくとも害はない、しかし自分がやれば滑稽であるばかりか危険だということが彼にはよくわかっていた。
 
 ウェンホアは、表向きでは常にレスターの指示に唯々諾々と従い、経理部長のワン・ホンにも協力的であったので、周囲は彼に疑いを抱くこともなく、レスターも問題があると感じたことは特になかった。彼の鬱屈した思いを知る者は彼自身のみであった。
 
 レスターの質問にウェンホアは笑いながら答えた。「前回ご紹介した二人の候補者ではご不満のようですが、この二週間で候補に上がった者たちよりはあの二人の方がましです。どの候補者も大規模プロジェクトの管理経験が不足していたり、コミュニケーション能力が低かったりという問題があります。ここにはクセの強い本部長も多いので、EQが高くないとうまく処理できない事も多いのではないかと。そうなると後々面倒なことになります」。
 
「部長職の経験が十分な者を直接採用すれば、経験は問題にならない」。
 
「はい、そのような者もおりました。しかし部長職の経験がかなり長く、仕事に慣れ過ぎていて情熱を失い、積極性に欠けるようでした。忙しい職場ですから怠惰な人間では務めきれないでしょう」。
 
 レスターは何度も手を振った。
「怠惰な者はダメだ。自分から動いて、経験が豊富で、各部署と上手くコミュニケーションをとれる者でないと」。
 
「おっしゃる通りです。ですが、そのような者はそう簡単に見つかるものではありません。ボスの許可だけでなく社長の許可も必要です。ご存知の通り、社長は以前から要求が高く、我々が散々苦労して探してきて、やっとのことで関連部署の承認をすべて得ても、社長のところで即座に拒否された例もありました。部長職を募集して六カ月になりますが、いまだにポストが埋まらないので、関連部署から毎日催促されて採用部長としてはプレッシャーが大きいんですよ」。
「この広い上海に優秀な総務部長は一人もいないのか」。
 
「良い人は必ずいるでしょう。ですが、伯楽(ヘッドハンティング会社)が彼らにapproach(接触)した時、彼らは我が社のポストに就くことを考えてくれなかったのです。優秀な人材は普通むやみに転職しようとはしないですからね。その人は現在もトップ五〇〇社の部長なので、我々の会社に来て同じく部長ポストに就いたところで何の得にもなりません。少しくらい給料を上げても大した魅力にはならないんです」。
 
 レスターは腕組みをして考えてから、少し前のめりになって言った。
「ウェンホア、採用は君の得意分野だが、総務部も重要なラインだ。普通はポストの交代は難しいのだが、とりあえずこの一~二か月、君に総務部長を代行してもらえないだろうか。仕事のスキルを伸ばすいいチャンスだと思うが、どうだ?」。
 
 ウェンホアは一瞬驚いたが、すぐに答えた。
「もちろんかまいませんが、ご存知のようにこの数か月間で埋めなければならない空きポストがあまりにも多く、採用部の社員たちはすでにアップアップの状態なのに、どの部署も早く後任を探せと我々に矢の催促です。他の仕事まで兼務するとなると我々の負担が大きすぎるのでは……」。
 
 レスターはうんうんと話を聞きながら考える振りをした。
 
 ウェンホアは探るように尋ねた。「ボス、総務のことはひとまずララに任せてみてはどうですか。彼女は半年間上手くやってきたではありませんか」。
 
 レスターは苦笑してララのメールの内容をウェンホアに伝えた。
 
 ウェンホアは頭をフル回転させた。ジョージ・ゲイツが四カ月前に訪中してから、中国市場の発展可能性を期待したアメリカ本社は中国への投資に重点を置くことを迅速に決定した。本社からは外人の一団がやって来て、毎日コンサルタント会社と各部署の部長たちが会議を行っている。野心に溢れた戦略的拡大プロジェクト“CHINA FOCUS”の草案がもうすぐ発表される。
 
 このプロジェクトはすでにおおよその枠組みが決まっており、ウェンホアの部署は素案に基づいてわずか三~四か月で大量採用をやり遂げなければならなかった。ピーターが提示した予算は十分でなく、ヘッドハンティング会社の利用はセカンドラインの部長以上を採用する場合に限られていた。これはファーストラインの部長など多くのポストは、すべてウェンホアの部署で採用業務を進めなければならないことを意味していた。
 
 だがウェンホアの部署はただでさえ今年は負担が大きい。会社の業績が伸び、規模が毎年拡大しているにもかかわらず、採用部の人員数はそのままである。彼の下には課長と二人のスタッフしかいない。この陣容で全国の採用と労務管理を担当し、さらには契約書類などの人事情報管理の責任も負わねばならない。人手不足であることは明らかだ。

 部下の一人は能力が高く、現在のポストに就いてもう五年以上になる。ウェンホアの右腕として活躍しているが給料はいまだに六〇〇〇元を少し超える程度だ。レスターが三年前に中国に出向してきてから、ウェンホアは彼を幹部社員に昇進させてほしいと何度か頼んだが、レスターは頑なに認めなかった。正当な理由もなく、ただウェンホアの部署は規模も小さいし、幹部社員に昇進させればハワードが黙っていないだろうと言うだけだった。
 人事部長を長く務めているウェンホアには、それは理由にならないことは明白だ。社長のハワードが部長職以下の人事に口出しすることなどあるだろうか。まして、この昇進人事は社内規定に抵触するところは全くない。ウェンホアはレスターの考えが全く理解できなかった。
 
ウェンホアに何度も部下の昇進を求められたレスターはこう言った。
「わが社の待遇が他社より悪ければ、普通ならもう辞めているだろう。ずっと辞めないでいるという事実が当社の待遇が彼の成果と能力にふさわしいことを証明している」。
 ウェンホアはレスターの論理展開に対して正面から争うほどの気持ちはなく、気長に機会を待つことしかできなかった。今回、「チャイナ・フォーカス」(CHINA FOCUS)プロジェクトのスタートに乗じて、彼はまたレスターにこう尋ねてみた。
「採用業務が忙しくなっています。ジェイソンは会社に対するロイヤリティが非常に高いですし、彼の貢献を認めて昇給してやることはできませんか」。
 
レスターの回答は官僚的であった。
「金の話をするのは良くない。会社には一定の昇給制度があって勝手に規定外の昇給を認めることはできない。そんなことをしたら社内の雰囲気が悪くなる」。
 
「彼が転職してしまうのではと心配です」。
 
レスターは動じることなく答えた。
「人が入れ替わるのも悪いこととは限らない。合理的な人材の移動は我々の会社に新たな風を吹き込こんでくれる」。
 
 ウェンホアは腹が立って仕方がなかった。自分が今すぐにでも「合理的な移動」をしたいと思った。ジェイソンは仕事を始めてもうすぐ十年、すでに三十を過ぎている。ウェンホアの面の皮がどんなに厚くても、彼にこれ以上待ってくれとは言えない。この先五か月は転職しないでくれとひそかに祈ることしかできなかった。
 
 ララがレスターに立ち向かっているのを見てウェンホアは胸がすく思いだった。仕事人間のララがこのようなメールを書けるようになるとは、人は闘争の中で成長すると言うが、それは真実のようだ。
 ウェンホアは考えた。ララはローズよりもはるかに人柄が良いし、熱心に仕事に取組み、めったに問題を起こさない。もし彼女が今すぐこのポストを埋めてくれれば、自分たちの採用業務の負担をいくらか減らすことができる。それに、総務部は北部・東部・南部のオフィス全てに置かれている。彼女は義理堅い人間だから、もし自分が今回彼女の後押しをすれば、忙しくて手が回らなくなったときには、各オフィスにいるララの部下たちに手伝いを頼むことも可能だろう。
 
 ウェンホアはレスターに言った。
「ボス、多くの部署からララの仕事ぶりはローズよりも上だと聞いています。もし彼女を登用すれば、目の前の問題はすぐに片付くのではないでしょうか。彼女もボスに感謝するでしょうし、私の見る限り、彼女は社内でかなり信頼されています」。
 
 レスターは少し考えて首を横に振った。
「総務部長は上海オフィスに置くことになっているが、彼女は上海に来たがらない。社長は反対するだろう」。
 
 ウェンホアは説得した。
「ボス、プロジェクトが完了した後、社長がララに手紙を出しましたよね。その手紙で彼女を非常に高く評価したそうです。社長も同意するのではないでしょうか。彼女も頻繁に出張しても構わないと言っています。二つのオフィスを行き来してしっかり働いてくれるでしょう」。
 
 レスターはハワードが手紙を書いたと聞いて驚き、動揺した。だがその件を知らなかったとは言えないので、少し躊躇ったがやはり首を横に振った。
「特定の人間のために部署を設けることはできないよ。やはり部署があるところに人員配置すべきだ。これは社員全員に適用されるルールだ。もし我々人事部が特例を設けてしまったら、今後別の部署が同じことをするようになるだろう」。
 
 ウェンホアは心の中でつぶやいた――それなら私が総務部長を採用するまでせいぜい気長に待つことだ。彼はそれ以上何も言わず部屋を出た。
 
 ローズが広州に来てララにDBを辞めるように勧めて間もなく、ララは転職活動を始めた。
 
 労働力集約型企業以外のトップ五〇〇企業は、ほとんどが上海か北京に本部を設けており、広州はビジネスの中心からますます遠のいている。会社組織体制を見ると、企業の広州オフィス総務部の最高責任者は総務課長止まりで、トップ五〇〇企業はどこを探しても広州オフィスに総務部長のポストを設けている会社はなかった。
 
 ララは二か月のあいだ転職活動を続け、厳しい現実に直面していた。ローズの退職後、レスターの態度は取り付く島もない。ララは市場でチャンスを探すしかなかった。
 
 ホワイトカラー・ワールド(転職斡旋会社)は、毎年二回、広州で欧米企業とIT企業の転職相談会を開催する。そこで紹介されるすべてのポストの年収は最低でも六万元だ。ララは思い切って直接その転職相談会で運試しをしてみようと思った。
 
 だが実際にはこのような転職相談会で大企業が部長のポストを募集することはめったにない。募集が最も多いのはやはりエンジニア、スタッフ、課長などのprofessional(専門スタッフ)のポストで、そういう職を探している場合はこのような採用イベントに行ってみるのも悪くない。転職の手がかりを得られずに焦ったララはとにかく手当たり次第にぶつかってみようと思い、相談会に出かけた。
 
 転職相談会はかなりの人だかりで、心臓が弱い人は絶対に騒がしさに耐えられないだろう。ララは人ごみをかき分けながら自分自身に言い聞かせた――トップ五〇〇にしか行かない、絶対に部長じゃなきゃダメ!
 
 彼女はHEPのブースの前で本当に総務部長職募集の貼り紙を見つけた。HEPはアメリカのトップ五〇〇で家電メーカーである。今回は珠江デルタ地域に工場を建てるため総務部長を募集していた。
 
 ララは、この工場は広州ではなく、広州のはずれにある小さな町に建設されることに目を止めた。求人広告には「広州市内と工場を結ぶ送迎バスがあります」と明記されている。
 
 ララは自問した――毎朝六時半に起きて夜十時半に寝る生活でも平気? 病院に行かなきゃいけない、美容院に行きたい、デパートで買い物したい、と思ったら休みを取る必要がある。さもなければ週末を犠牲にするしかない。遅刻もできない、だって工場は市内からすごく遠くて交通の便が悪いから送迎バスに乗るしかないもの。
 
 決して満足できる条件ではなかったが、ララは部長職に就きたいという思いがかなり強かった。彼女は自分に言い聞かせた――二年間我慢して履歴書にトップ五〇〇での部長職の経歴を書くことができれば、次は市内の中心部で部長職を探すのがずっと楽になる。今はただ話を聞いてみるだけだし、すぐに決めるわけじゃない。話を聞くだけなら損はない、これも経験だと思えばいい。
 
 ララはその場で腹を決め、人ごみをかき分けて履歴書を渡しに行った。彼女は最初に高い位置に貼りだされた求人広告しか見ていなかったので、履歴書を渡す段になって初めてそこに座っているHEPの採用担当者の様子が目に入った。
 
 彼女に応対したのは三十歳前後の若い男性で、髪はゴワゴワしていて黄色っぽく、髪型は一見しただけで下手な理容師がカットしたであろうことがわかった。安っぽいスーツのインナーにメリヤス編みの青いセーターを着て椅子に座っていたが、片時もじっとしていることはなく、頭を揺らしたり腕を伸ばしたりしていた。
 
 彼はそっけない態度でララが両手で渡した履歴書を受け取り、パラパラと適当にめくって、彼女の現在の役職が総務課長であることを確認すると、彼女と全く目を合わせずに結論を述べた。
「あなたのキャリアで総務部長に応募するのはまだ早いですね。弊社には別に総務部長補佐というポストがあり、食堂と保安、緑化、車両を担当します。このポストなら応募可能です」。
 そう言いながら彼女の履歴書を指で弾いた。
 
 野暮ったい髪型とスーツの下に見えるメリヤス編みのセーターはまだしも、全身をやたらと動かすジェスチャーが不快で、ララはその場から抜け出したくなった。
 
 職探し中なんだから我慢しなきゃと懸命に自分に言い聞かせ、彼女は丁寧に説明した。
「総務部長の主要な職務はオフィスの大規模リフォームプロジェクト管理です。今の会社で総務部長が不足していたため、幸運にも私がそのようなプロジェクトの管理を任されました。社長からいただいたこの手紙は私がそのプロジェクトで活躍したことを証明してくれています。ですので、自分は総務部長職に適任だと確信しています。ただ、会社はこのポストを上海に設けていて、私は広州に住んでいるので、やむをえず広州で働く機会を探しているんです」。
 
 HEPの採用担当者は煩わしそうに、話を遮るような手ぶりをして言った。
「そこまでの説明は結構です。我々には我々の採用基準がありますので」。
 
 ララは笑顔を作って後ろの人に場所を譲るしかなかった。彼女は心の中でひそかに腑に落ちない思いであった。同じトップ五〇〇の人事でもこんなにレベルに差があるのか。ウェンホアの部下のジェイソンは、レスターがずっと彼の昇進に反対していて、給料も安いそうだが、HEPのこのひどく傲慢な採用担当者と比べればずっとプロフェッショナルだ。
 
 ララは思った。目の前のこの採用担当者から判断するだけでも、この会社には全く期待できない。彼自身がこんなレベルでHEPに優秀な人材を招くことができるのだろうか。たとえHEPに総務部長として採用されても行きたくない。一日中こんな人たちと一緒に働いたって絶対面白くない。レスターの下で適当に働いている方がずっとまし。課長の私にだってレスターはとても礼儀正しく接してくれるし、立ち居振舞いもまるでハリウッドスターのようで、少なくとも目の保養にはなる。
 
 ララはHEPのブースを離れてしばらく考えたが、ここで引き下がるわけにはいかないと思い、また他の大企業のブースをあちこち見て回った。するとトップ五〇〇の化学品メーカーを見つけた。黄埔経済開発区にある工場で似たようなポストを募集している。おそらく製品の付加価値が高いせいだろう、この会社の社員はレベルがずっと高く、自分に合いそうな気がした。履歴書を手渡し、採用担当者と少し話をしてみると、DBの総務部長と比べればかなり楽そうな仕事だと思ったが、やはり勤務地の問題が彼女を躊躇わせた。ずっと市の中心部で働くことを希望している彼女は結局がっかりしてその場を去るしかなかった。
 
 会場の人ごみを抜け出すと、すでに三~四時間も経っていることに気づいた。顔全体がベタつき、エレガントなベルベッドのジャケットも少しよれていた。ハイヒールを履いて長い時間立っていたため、足が痛くてたまらない。
 
 彼女は疲れて落ち込んでいた。誰かにこの辛さを訴えたくて携帯を取り出したが、誰に電話したらいいか分からなかった。
 
 帰宅してハイヒールを脱ぎ捨て、ソファーに倒れ込んだ。そして、ドクンドクンと脈打つこめかみを押さえて、どうしたらいいのかと考えた。
 ホワイトカラー・ワールドは珠江デルタ地域では質の高い転職相談会だということはよく承知している。しかし、ここでは自分の期待しているような仕事を見つけることはできない。転職相談会という線は諦めたほうがいい。ララは考えた結果、ヘッドハンティング会社を探してみることにした。
 
 DBが利用しているヘッドハンティング会社は「伯楽」と「科鋭」だから、その二社以外ならどこでもいい。。しかし、一体どこのヘッドハンティング会社に相談したらいいのか見当がつかなかった。優良ヘッドハンティング会社はどこなのか、どうやって連絡を取るかも分からない。ララは途方に暮れてため息をついた。
 
 だんだんと夜が更け、彼女は暗闇に包まれて深い眠りについた。

|

« GO! ララ、GO! (16) | トップページ | GO! ララ、GO! (18) »

翻訳」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« GO! ララ、GO! (16) | トップページ | GO! ララ、GO! (18) »