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GO! ララ、GO! (9)

  

九 五%で十分だ  

 

そんなときに上海オフィスの総務課長が突然辞職した。さして影響力のない人物あったが、この時期に辞められてはすでに過重な業務負担にあえいでいる総務部にとってはやはり痛手である。レスターは部長代行見つけられるかどうかにかかわらず、まずはララを逃してはならないと思った。  
 
。  

彼はララにこう因果を含めた――ローズ妊娠体調を崩したため、君負担はさらに重くなるはずだ。会社としてその苦労に報いるため給料を特別に五%アップすることにした。この重責を全うすればこれまでにない価値ある経験から多くを学ぶことになろう。君自身の社内における競争力は確実に新たな段階に進むだろうと信じている。 

ララは生まれついての勤勉さから最初に就職した国有企業自ら積極的に仕事を探し、一日中休みなく働いた。そのため、同じ部署新聞を読んだりお茶を飲んだりして時間をつぶすのに慣れている同僚たちそろって彼女を憎んだ社会に出てすでに八年近くたち二十八歳になていたが、この点は全く進歩していなかった。  
 

彼女は仕事さえあればやる気が湧き起こる。どうしたら目の前の仕事うまくいくかしか考えられなくなり、その成功の先に何が待っているかについてはほとんど考えたことがない。たまに考えたとしても、彼女の想像力が及ぶのはせいぜい年末のボーナスが増えて社内考査の評価exceed”(優秀)に上がる程度に過ぎず、キャリアプランに関して彼女は何の計画もなく知恵も働かないようだった。  
 
 たとえば、現在の状況に鑑みると、課長になって二年のララの基本給はおよそ六五〇〇元、五%はわずか三二五だ。スズメの涙の三二五と、プロジェクトのために費やす労力、レスターを無事に退職させるための貢献、DB中国にCEOを迎えるための準備という重要な任務、それぞれの釣り合いを考えると%はあまりにも取るに足らない数字であった。しかし、彼女はそんな計算はしなかったのである。  

 

ララがサプライヤーとの商談に長けていたのは、業務だけに集中できたからだ。自分の将来収入などについてタイミングで上司と交渉すべきに関心がなく、今まさに自らが手中にした駆け引きの手段にどれほどの価値があるかも考えなかった。さらに、課長の自分に部長の仕事は無理だ甘えて辞退することもできたはずだ。しかしララは、少なくとも部長がすべき仕事をこなす自信がないと訴える権利があるこすら思いつかなかったのである。  

ララは五%の昇給を名誉の象徴と受け止め、組織の彼女に対する信頼の証であると思った。それにレスターが言ったようにプロジェクトを通して「学ぶ」ことができる。「学ぶ」のはもちろん重要だ。しかしララは、何かを学ぶのはよりよい収入よりよい前途を求めるためだ考えなかった。要するにこのプロジェクトを引き受けたら人物に会社何を与えるのが相応しいかということを、彼女は考えてもみなかったのだ。  

  

彼女がただの課長でなければこの駆け引きのなさはレスターに大いに見くびられていただろう。レスターは自分が与えた職責をララが喜んで全面的に受け入れのを見て、内心ララに定義を下した。ララの付加価値は五%で十分だ。彼女は戦略的思考に欠け、働くだけしか脳がない、この類の社員多く与える必要はなく、与えすぎるとむしろ戸惑ってしまうだろう。  
 
  
 ララのほうでは自分重用されていると感じ喜んで任務を引き受けた。他方、ローズはといえばすでに病欠を取り始め、引き継ぎさえもしなかった。  

  
 ララは、ローズがのプロジェクトを一人で抱え込んで上海総務部の他の社員をほとんど蚊帳の外に置いていたことに気付いた。彼女はなサプライヤーを数社呼びつけ、さらにIT部長も巻き込、仕入部の同僚つきまとい、毎日真っ暗になるまで働いたララ自身も毎日十一時過ぎまで残業て会社を出るのはいつも最後だった。  

 
 ハワードは上海に戻るとすぐレスターを呼んで話し合った。アメリカ本社不動産部のロスのメールで、彼はレスターがこの件の管理責任を果たしていないのではと感じていのだ。  

 
 彼はレスターローズに関する報告を聞き、ローズの妊娠はかなり疑わしいと思った。しかし、たとえ虚偽の申告であったことを突き止めたところでどうなるというのか。妊娠を偽るような人間にプロジェクトを任せて成功するとは思えないし、彼女を摘発しても実際的な意義はい。ましてや、悪くすれば妊娠は事実かもしれないのだいま最も重要なのは、信頼できる人物を配置してプロジェクトを主導させ、全く装いを新たにしたオフィスでジョージCEOを迎えられるようにすることである。  


 彼はレスターに尋ねた。 

我々の内部にこのプロジェクトを管理するのに適切な人間は他にいないか?」  

 レスターは「広州の課長のララは、ちょうど半年前広州のリフォームプロジェクトを完了しています。いい仕事をしましたよ。しかし彼女は課長になって二年ちょっとすから、このプロジェクトを担当するには経験不足だと思います」と説明した。  

 だが仮に新しい総務部長を募集したとして、DB内部のプロセスと複雑な内部組織について知識がなくても、すぐに仕事に取り掛かることは可能か?」  

レスターは、イエス言えなかった。

 ハワードは素早く考えを巡らせ「Anyway、求人はしておこうと言った。 

 「新人を採用するまではしばらくララにこのプロジェクトの責任を担ってもらおうと考えています。各エリアのオフィスの総務も彼女に統括させようかととレスター。

 「それでは彼女は実質的には総務部部長代行ということか」。

 「そうです。仕事の負担増を考えて特別手当を出すことを認めてください」。  

 ハワードはうなずき、「もちろんそうしてくれ」と答えた。 ハワードは社内で高いポストにあり、常により重要な業務について考えなければならない立場だ。そんな課長風情の待遇をいちいち気にするはずもないのだが、その特別手当が雀の涙の五%だとは知る由もなかった。  


 レスターが後任の人事を急いでいる最中、ララは悪くない条件素早く賃貸契約更新を完了した。財務担当VP(副社長)のピーターは非常に満足し、ハワードとレスターにmailを送ってララの手柄を褒めた。  

 
 ハワードはそれまでララがこの件も引き継いだとは知らなかったが、このmailで彼女契約更新をてきぱきと要領よくこなした知った。  


 レスターは、この件に対して少し複雑であった。上海不動産価格は高騰し、オフィスビル取引は盛んであったが、彼は相場が良く分かっていなかった。またローズにずっと任せきりで賃貸契約の更新うっかりしていたため、アメリカ本社不動産部のロスに明らかなミスを指摘されて恥をかき、契約更新できるかどうか心配していた。ララが更新を完了ほっとしたと同時に、この件は実はさほど難しくも複雑でなかったのに下っ端の総務課長にあっさり片付けられてしまったように感じた。 


 レスターには彼なりの長所がある。たとえば彼の上司としての寛容さだ。ララはこの部署にやって来たとたんに好条件で賃貸契約更新するという大手柄を立てた。しかし、それをレスター名前で上層部に報告する形をとらず、mailでレスターに報告する同時に財務VPのピーターにもCC送信した。そのため、これはララがやり遂げた仕事であってレスターの手柄ではないことが関係者全員に知れ渡ることになったのである。レスターはいくらか情けない気持ちにはなったがララをとがめだてすることはなかった。ララはたまたま運がよかったが、もしレスターでなく別の上司だったら彼女のやり方を批判叱責したことだろう。  


 予算に関しては、ララは明解な費用分析を提出した。予算要求は七五〇DB中国の幹部は彼女のプレゼンに耳を傾けこの数字の合理性を理解したしかし、七五〇万と四五〇ではいかにも差が大きすぎる。ハワードは、リバイスした申請書の数字が四五〇万から七五〇万に跳ね上がっていたら、アジア太平洋本部とアメリカ本社DB中国の専門性と厳密性を問われるだろうと感じた。そこで最終的に五百万と決め、主としてオフィス面積の十拡張増額要求の理由にした。 

    
 ララは大いに悩んだ。できる限りコストを下げるにはなるべく今あるものをリフォームして使うしかない。彼女は業者に対して修繕できるところは修繕して使うよう強く命じた。たとえば、木材は比較的高価なので、現在のドア枠を全て解体し、やすり掛けしてからニスを塗り直すように要求した。業者はドア枠の多くはすでに損傷が大きく修繕は不可能だ言ったが、彼女はとっさの思い付きでドア枠の角を面取りしてからニスを塗れば新品同様になると提案した。しかし、このやり方にはかなり手間がかかり業者に悲鳴をあげさせることになった。  

 
 これ以外にも機械電力関係の費用も節約するためには部長室を大幅に減らすしかない。各部屋にエアコンを設置しなくてはならないが、共用エリアなら同じ出力のファン三人分の業務スペースに送風することができる。  

 
 DB国際調達規定ではノーテル・ネットワーク社の交換機システムを使用することとある。ララ計算では新システムに変更するだけで百は余計にかかり、ローズが言った五十万では全く足りない。部長室の内線電話差し込み口は三箇所だが、共用エリアなら各社員に一箇所あればよく、部長室に比べて三分の二の資源を節約できる。部長室の数をある程度まで減らせば内線工事を少なくでき人員が%増えても既存の交換機容量でサポートできる。 

  
 オフィスの部屋減らすには、今は自分の部屋を持っている部長に共用エリアに移動してもらわなくてはならない。これは多くの社員メンツと利益にかかわる問題でもあり、彼らを不愉快にさせるアイディアでもある。レスターはララの提案に困惑し考慮しようともせず、ただひたすら別のやり方、たとえばより安価なリフォーム業者を見つるなどしてコスト減を図るよう頭ごなしに要求した 

  
 ララは困り果てた。リフォーム業者の質を落としたら、彼女はこのプロジェクトをやりおおせることができな。第一に、DB内部には人的資源が足りずこの分野の経験豊かなスタッフをプロジェクトに加えることができない。そうなると協力的で高い技術のあるリフォーム業者にサポートさせるしかない。第二に、DB幹部の要求するレベルが非常に高く、優良業者でなければ会社上層部の提起した設計案を理解し実現することすら難しいのである。  

 

 彼女はさんざん考えたあげく、やはり既存設備を最大限活かし、部屋数を減らす方法でいこうと思った。  

 

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