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GO! ララ、GO! (4)

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四 上司と協調性を保つこと

  ララはチャンからは問題解決のヒントを得られず、自分の頭で考えるしかなかった。

  彼女はヘレンに命じて上海の総務報告書の書式を取り寄せた。検討の結果、広州オフィスで使用しても差し支えないことを確認してから、広州オフィスで使っていた書式を廃止し上海オフィスのフォーマットをそのまま使用することに決めた。この措置はララのもくろみ通りローズの歓心を買った。ローズの使い慣れた書式を用いたのでデータをチェックするのに今までよりずっと便利になり、部下が自分についてきているという満足感も味わった。

 ララにとっては、ローズが自分自身の推奨している書式にけちをつけることはあり得ず、書式が気にいらないというだけで叱責されるリスクを避けることができる。これこそ典型的なWin-Winの関係だ。

  唯一不満だったのはヘレンだ。彼女はもとの書式に慣れていたので、新しい書式に慣れるのに時間がかかり、細かくびっしりと書かれた表を見ただけで、数字に弱い彼女は頭がぼうっとしてくる。今まで何の問題もなかったのになぜ変更する必要があるのか。内心で思わずララの靴磨き(広東方言、「ごまをする」の意味)をさげすんだ。

  ララはヘレンが心中では自分に不満を感じていることを察して、彼女を自分のとなりに座らせて聞いた。「もしあなたがローズだったら、事務所の月度報告書がいろいろな書式で出てくるのと、同じ書式に統一されているのと、どっちがいい?」。ヘレンは考えもせずに「それはもちろん統一した書式が便利ね」と答えた。

「統一の必要があったら、あなたは自分が使い慣れた書式がいい? それとも使い慣れない書式の方がいい?」。

 「もちろん自分が使い慣れているものを選ぶわ」とヘレン。

 「ということは、ローズも自分が使い慣れている書式のほうがいいわよね」。

  ヘレンには返す言葉がなかったが、しばらくは気がおさまらず、また不服そうに言った。

  「私たちの元の書式のどこが悪いっていうの。変更したせいで慣れるまですごく時間がかかる」。

ララは笑いそうになるのをこらえて、一つ一つ順序だてて諄々と教え諭した。

「頑張って一日も早く昇進してもっと重要なポストにつけば、部下はあなたを尊重して上司と協調してついてくるはず。現在の部長はローズなんだから仕方ないでしょ?」。

  ヘレンはまだ文句がありそうだったが、ララは彼女に年初に設定した社内考査目標の「行動」欄に記載された全従業員の考査基準項目のひとつを指し示した。

 「上司との協調性を保つこと」。

 ララはヘレンにその欄に自己評価として記録しておくように言った。

 「年度末の自己評価のときには、今回の件を自分のグッド・パフォーマンスと会社への貢献の例として書けばいいわ」。

  ヘレンはこういうpaperwork(報告書作成)がいちばん苦手だった。というのも、会社の基本的なカルチャーについてこれまでずっとよく理解しないままで、年度末の自己評価報告書は仲の良い同僚に懇願して手伝ってもらっていいかげんに提出していたのだ。課長と一年を振り返る面談をする際にも、彼女はひたすらうなずき続けてやり過ごしてきた。ララにこう言われてみると、ヘレンはもっともだと思い、書式変更は面倒ではあるけれど、この件で「上司との協調性を保つ」意味を理解でき、また目標を達成した実例を示すこともできる。これなら十分に割に合う。彼女は急いで自己評価として記録を残した。

  ちょうどその頃、レスターが広州オフィスを訪問した。ララは彼のお供をしてあちこちを見て回り、その間に何度か機会をうかがってローズに対する見解を探ろうと思った。レスターは部長全員の名を正確に憶えていて、いかにも大物経営者のように人々と力強く握手をし、肩をたたき、さわやかに大きな笑い声をたてた。彼とあいさつした従業員たちも彼につられて楽しそうに笑う。ララは内心では不思議でしかたなかった。会社の上層部は年に何度もSC(サウス・チャイナ地域)に来るわけではないのに、どうしてこんなに多くの部長の顔と名前を憶えているのだろう、会社の幹部はみんな天才なのだろうか。

  ララがレスターと一緒にオフィスの奥まで来たとき、一人の部長がレスターを見かけてあわてて出迎えに来た。レスターは見覚えがある気がした。おそらく重要な役職の部長だろうとは思ったが誰なのか思い出せない。すばやく頭をわずかに傾け、ささやき声で「Who’s this guy? (あの人は誰だっけ?)」と尋ねた。

ララはすばやくささやいた。「Jack Qiu, Key Account South RSM (SCリージョン大口顧客部部長のジャック・チウです)」

 レスターはその人に向かって大股で近寄り、スマートな身のこなしで出迎え、右手を伸ばし、力を込めてしっかりとジャック・チウの手を握った。左手は同時に彼の肩を軽く叩き、ハワイの太陽のようにまばゆい笑顔で“Hi,Jack!How are you doing?”と声をかけた。

 ジャック・チウは人事本部長がこんなに自分のことを憶えていてくれたことに大喜びして、慰労の言葉も聞かないうちに、顔をほころばせて、“I am fine, thank you!”と繰り返した。

 ララはその様子を目の当たりにして面白くて仕方なかったが、顔には出せずただ微笑んでいた。そして内心でローズに対するレスターの見解を聞くのはやめようとひそかに決心した。

  レスターはララのために特別に三十分間の時間をとって、二人きりで彼女が課長になってから数か月間の状況について報告を聞いた。ララは、ローズが何でも教えてくれ、仕事は非常に充実していると答えた。

 レスターはしきりにうなずきながら言った。「ローズは仕事の経験が非常に豊富だ。私は君が今のポストに満足していることをうれしく思うよ」。

 ララはベストなやり方を見つけられず、ローズとは「上司との協調性を保つ」ほかなかったのだが、それ以外にローズが自分で管理しようとすることは何かを徹底的に研究した。こうして上司の頭の中にあるルールを見つけ出してからは、どういうときにローズの指示を仰ぎローズの考え通りにする必要があるのかがわかるようになった。ローズに部下にわざとミスを犯させてスケープゴートにしてやろうといった意図でもないかぎり、自分からは決して口出しをしないと決め、ひたすら言うとおりに働いた。ローズが興味を持たないことやたいして価値のないことは自分で適切に処理してローズの手を煩わせることはない。逆に、ローズがしっかり握って手放さないこともあったが、自分が何か提案できるときには役に立つ情報を積極的に提供し、ローズの判断材料とした。こういうやり取りを何度か繰り返していくうちに、ローズから恐ろしい電話がかかってくることもほぼなくなった。

 

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