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GO! ララ、GO! (2)

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二 片思いとセクハラ

 ララはDBの部長室は廊下側がすべて大きなガラス張りのパーテーションで区切られていることに気づいた。ヘレンに「このデザインは美観のため?」と尋ねると、「いいえ、sexual harassment(セクハラ)防止のためよ」という答えが返ってきた。

 ララは好奇心にかられて尋ねた。

 「セクハラが起きたことある?」

 「聞いたことない」とヘレンは首を横に振った。

 「万が一、あったら?」「クビよ! 会社の規定あるもの」と、ヘレンはきっぱりと言った。

 ララは何事も忽せにしない精神で追究した。

 「どういう基準でセクハラと判断するの? 本人が恋愛だと言ったら?」「上司のローズ部長から聞いたんだけど、レスター本部長が恋愛とセクハラの違いについて明確に定義したそうよ。恋愛は双方がともに望んでいるけど、セクハラは一方的な願望だって」とヘレンは答えた。

 ララはそれを聞いて笑った。「片思いも一方的な願望でしょ」。

 ヘレンは驚いたように黒目がちな大きな目をくるくると回して答えに詰まった。ララは彼女に近寄りこう冗談を言った。

 「私がその説明に補足しましょうか? 次に新入社員に聞かれたとき言い負かされないようにね。片思いはセクハラに発展しかねない。片思いしてる人が何らかの行動に出て相手を困らせたり危害を加えたりした場合はね。想いを心に秘めてるだけなら問題なし――私が補足した定義は本部長に言っちゃだめよ」。

 ヘレンは感心してうなずき、ララが営業アシスタントであることを内心不思議に思った。彼女は課長でもおかしくない。こんな話し方をするのは課長クラスだ。他のアシスタントは彼女のように意見を言ったり総括したり定義したりしない。  

 ララはガラスのパーテーションを見て考えた。セクハラは予防することが出来るが、独身のマネージャーが社内恋愛をしようとしてもきっとこのガラスのせいで思うようにいかないだろう。

 ヘレンは彼女の気持ちを察したかのように言った。

 「社内恋愛は禁止されてないけど、社内結婚には規定があるの。直属の上司と部下は結婚できない、結婚するならどちらかが異動させられる――でも普通は夫か妻のどちらかが自己都合で退職するわね。社内結婚はめったにないし、特にマネージャークラス以上で社内恋愛してるなんて一度も聞いたことがない」。

 「結婚についても明確な規定が?」

 「もちろん。社員ハンドブックに載っているわ。入社したとき、内容を理解して同意した証拠に手帳にサインしてしたでしょ? 後でよく読めばわかる」。

  ララは社員ハンドブックにそんな内容まで書いてあると聞いて、帰宅してから早速一通り読んでみると、確かに様々な問題に答えてくれることがわかった。

 ララは入社した週に何件かの書類にサインをした。雇用契約のほかに傷害保険受取人指定書類、社員ハンドブック、ビジネス行動規範などがあった。

 ビジネス行動規範とは、社員がすべきこととすべきではないこと、職責怠慢にどんな懲罰があるか等々、その企業の文化が何を道徳的とし何を不道徳的とするのかを会社が公式文書の形式で社員に明確に示すものだ。

 会社が社員のために加入している傷害保険の条項によると、もしララに何か事故が起きた場合、受取人はララの月給の六十倍の賠償金を受け取ることができる。補償の最高額は二百万元以下……―一この条項を見てララは自分が会社の中で最貧困層であることを知った。彼女は月給四千元、つまり賠償金は二十四万元。二百万元と二十四万元の差は割り算をするまでもなく明白だ。それに二百万元は明らかに社内の比較的上のクラスに属しているにすぎない。

 ララがヘレンから得た情報では、会社の課長以下の非営業社員の年末一時金は三か月なので年収は月給の十五か月分だ。部長クラスになると更に二か月分の一時金が部長手当てとして支給され年収は十七か月分になる。部長以上の一時金規程についてはヘレンも知らなかった。

 知らぬが花という言葉どおり、この事実を前にしてララは愕然とした。もともとは平穏な日々を送るつもりだったララであったが、保険契約にサインをしたとき俄然として出世して高給取りになりたいという欲望が燃え上がった。俗に言うキャリアアップ願望だ。

 一時金を除き、各種の福利厚生にも階級ごとの差があった。例えば有給休暇は一般社員が年に十五日間だが、部長クラスはさらに何日か多い。

 また携帯電話の費用はファースト・ライン〔現場スタッフを管理する係長・課長クラス〕は毎月五百元まで、セカンド・ライン〔ファースト・ラインを統括する部長クラス〕は限度額を設けず、通話料はすべて実費清算できる。

 ララは驚いてヘレンに質問した。

 「じゃあ、いくらでも実費請求できるの?」

 ヘレンは事もなげに「そうよ、好きなだけ使える」と答えた。ララは疑わしげに「もし私用電話をかけまくったら?」と聞いた。

 ヘレンはふふっと笑って、「私用電話をかけまくっていいのよ。上司のローズが言っていたけど、これは形を変えた福利なんだって。けど、あなたもそのうちにわかると思うけど、セカンド・ラインには私用電話をかけまくるような余裕はないの。いずれにせよ、出世するほど福利が良くなるのは確か。でも上に行けば苦労も多いわ」。

 それもそうだ、とララは思った。セカンド・ラインには私用電話をかける用事はそれほどないだろう。それに比べると、前にいた香港台湾資本の企業では携帯電話の通信費上限を低めに設定するか、経費精算には明細書を提出させるかしていた。

 ララは密かに思いをめぐらせた。これがもしかしたら欧米系外資企業と香港台湾系企業の差かもしれない。一定の範囲内で社員を信頼して自由を与え、気持ちよく働けるようにする。少なくとも、DBは羽振りがよく鷹揚だ。自分はまだ「好きなだけ通話料を精算できる」福利を享受してはいないが、会社を誇らしく思い、ひそかに喜びを感じた。

 ララはふと思いついてヘレンに尋ねた。

 「ヘレン、DB中国に女性の本部長と地域部長は何人くらいいるの?」

 ヘレンは内線電話の一覧を取り出して数え、「本部長二十四人のうち女性は六人、営業部の業務ラインは三部門、法人顧客部門は五地域に分かれて五人の地域部長がいる、大口顧客部門と一般顧客部門はどちらにも三つの課が所属して地域部長は三人、合計で十一人の地域部長のうち、女性は三人ね」。

 ララは心の中で黙々と計算した。管理職の女性比率はほぼ四分の一弱である。

 ヘレンは「部長が私用電話をかけまくったら」という先ほどの話題を思い出して言った。

  「ララ、地域部長になれるのは健康で精力的な人だけよ。だから少しでも時間ができると、男性ならスポーツで汗を流すし、女性ならエステに通うわ。電話でつまらないおしゃべりする暇はないってこと。そうでなければ地域部長になんかなれない」。

 ララは笑いながらうなずいて賛同を示した。

 もともとゴシップ好きなヘレンはララに会社の階級を区別するための呼び方を教えた。ララがまとめたところによると次の通りである。

 部長以下は「プチブル」、小資産階級の貧乏人である。公共交通機関を利用して通勤する。そうしなければ住宅ローン返済に影響が出る。

 部長クラスは「ミドルクラス」、中産階級だ。最初の家を購入するときにローンを組む必要はない。典型的なファースト・ラインの自家用車は「ボーラ」〔フォルクスワーゲンと中国第一自動車の合弁会社が販売したセダン〕で、会社が提供する通勤手当で部分的に費用を賄うことができる。セカンド・ラインは「パサート」〔フォルクスワーゲン社のステーションワゴン〕に乗り、会社が提供する通勤手当で車の維持費はほぼ賄うことができる。

 本部長階級は「ブルジョア」、有産階級である。単に持ち家があるだけではなく、高級住宅地の優良物件か「別荘」だ。社用車を使うか、社用車と同クラスの自家用車を会社の経費で買うか選ぶことができる。しかも維持費など車関係の経費はすべて会社の負担だ。

 VP(副社長)とpresident(社長)は「キャピタリスト」、資本家階級である。家には管理人と守衛がおり、会社からは運転手付きの送迎車が用意され、出張ではファーストクラスに搭乗する。

 ララは思った――ずっと営業アシスタントなんかやってられない、「プチブル」で終わるなんて絶対にいや。

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