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三毛の中南米紀行 -16-

サテの娘

 ラパスの最後の夜、ここで知り合った中国人の若い男性を誘って皆で夕食を食べに行った。街道沿いのレストランを物色している途中でインディアンの店の前を通ると、彼はここで出す料理は現地では田舎者の食べ物と呼ばれています、と身もふたもない表現をした。

ボリビアには他の南米諸国とは異なる文化、習慣、嗜好があるが、実際にはたいへん美味しく、私は田舎っぽい味だなどとは全く思わない。飲食もその国の文化だとすれば、ボリビアの文化は大衆的だ。ここではホテルの何十ドルもする高級な食事もあれば、街の市場や一般のレストランで供される少し変わった安くて美味しい食べ物に出会える。この国には世界最大の湖チチカカ湖があるのでマスはさほど高い食材ではない。また、スパイシーなチキン料理は南米随一だし、牛タンはコスタリカにも負けない。街の小さな食堂で出す料理は間違いなく丁寧に作られた味がする。

多くの人々がボリビアを後進国であると考えているが、訪問してはじめてそれが事実ではないことがわかる。これほどすばらしい国がなぜそんなふうに思われているのだろうか。

ここには不味すぎる食べ物はない。インディアンの女性がロウソクを吊るしている露店でも食べてみたがどれも一流の味だった。特に気に入ったのは、エキゾチックな味の焼餃子だ。この餃子は現地語で「サテの娘」と呼ばれている。焼いた小麦粉の皮の中に辛い鶏肉、豚肉、ジャガイモとタマネギが入っている。ガラスの保温ケースに並べられたそれは一つ二ドル五セント。財布くらいの大きさで、庶民の主食のひとつである。私は毎朝ホテルを出ると決まって近くにあるインディアンが経営する小さなカフェに入る。新鮮なミルクと「サテの娘」を二つ頼む。地元の人々もカフェでこれを一つか二つ食べて朝食にしている。ミルクとパンといった類のヨーロッパ式朝食を食べている人は――もしかしたら私が庶民的な店ばかり選ぶせいかもしれないが――見かけたことがない。私が朝食をとる小さなカフェでは、毎日サテの娘を百個仕入れるそうだが、昼前に完売してしまう。こういう、その土地ならではの食べ物は一般的な観光客用レストランではめったにお目にかかれない。

 ボリビアの食べ物は種類が多く、味わいも他の南米諸国とは異なる。聞くところではボリビアには多くの華人旅行客が訪れるそうだ。もし彼らが観光客用レストランではなく、街でボリビア人の食べ物にチャレンジしてみれば、それはそれで一つの楽しみになるかもしれない。

私は三十六個めの「サテの娘」を食べ終わると、後ろ髪を引かれる思いでボリビアをあとにした。

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